【ICT教育事例/町田市立町田第五小学校 校長 五十嵐 俊子 氏インタビュー】ICTで実現する対話型授業と児童の変化

東京都町田市立町田第五小学校 (以下、町田第五小学校) は、町田発未来型教育モデル校として、「Edtechを活用した新時代の学び」に挑戦しているICT教育先進校。今回は町田第五小学校 校長である五十嵐 俊子氏にICT教育導入による学びの変化や、感染症による休校期間中の対応、今後の課題などをお話しいただきました。

 

東京都 町田市立 町田第五小学校
校長
五十嵐 俊子氏

 

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町田第五小学校のICT教育について

ー町田第五小学校のICTに対する取り組みを教えてください。

本校は町田市教育委員会の方針に基づき、2018年9月より Chromebook と G Suite for Education を使った授業をスタートし、現在はEdtechを活用した次世代の学びに挑戦しようとしています。

 

ー以前からICTを利用されていたのでしょうか?

元々はコンピュータ室に40台しかパソコンがなかった学校だったんです。ただ、本校は「対話」について従来から研究しておりまして、対話をより深めるためにはどうしたらいいのか、その手立てとしてICTツールは有効だと考えておりました。大学から端末をお借りするなどいろんな方法を考えていたときに Chromebook のお話をいただいたんです。 Chromebook は全員の考えが画面上に集約されるため、時間や空間を越えて対話ができることを知り「これはすごい!」と使い始めました。

 

(町田第五小学校外観)

 

Chromebook の活用方法

ー実際の授業で Chromebook をどのように活用されていらっしゃるのですか?

全教科で Chromebook を活用した対話を行っています。本校では “自分の考えをしっかりもち、それを表現する” ということを大事にしております。クラウド学習ツールの G Suite for Education は一度に全員の考えを見ることができるため、何が自分と同じなのか、違うのかを、手を挙げたり相手に聞かなくともわかるという良さがあると思っています。

いろいろな考えに触れ、自分の考えと他者との違いも知ることで、自分自身の考えが変わったり、更によくなったり深まったりしています。また、違う考え同士の子ども達が話し合うことで、新しい考えを創っていくというような場面が沢山見られています。

 

ICT教育での学びの変化

ーICTによる対話を深める授業で、児童たちの学びに変化はありますか?

今までは手を挙げるのが得意な子が発言を占領して意見が通っていく、ということが少なからずあったと思うんです。しかしICTにより全員の意見が分かるため、答えは一つではなくいろんな考えがあり、自分自身の考えもまだほんの一部だということに気付くようになっています。また、現段階の意見で満足せず、まだ先の答えがあるんだという「もっともっと」という学習を深める意欲に繋がっているというのが大きく変わったポイントだと思います。

 

ー素敵ですね。確かに従来の教育は1つの解を導くというのが主流でしたが、いろんな考えや答えがあるというのを児童に可視化して示せるということなんですね。

そうです。他にも自分の意見に自信をもてない児童が、手を挙げて意見を言うにはハードルが高くても、ICTのおかげでクラウド上では自信をもって意見を書けています。また、他の子の意見を聞きながらじっくりと時間をかけて自分の意見をもつ子は、クラウド上では自分から一歩踏み出して発言できるようになったりもしています。お互いの違いを理解しながら、相手の意見や考えも尊重できるという雰囲気になっていきました。

 

ーまさに個別最適化の学びができるICTの良さですね。

はい、その通りです。本校は“誰ひとり置き去りにしない個別最適な学び”にも力を入れています。クラウド学習ツールだとそれぞれの違う意見がでて、それにコメントを出しあったり、ひとつのものを同時にみんなで「協働」して作れたりするんですよね。これは本当にすごいことです。

 

 

小学生の活用度合い

ー文部科学省のGIGAスクール構想では小学1年生から一人一台端末の実現を掲げていますが、小学生でも問題なくICTを使いこなせているのでしょうか?

現状、端末の台数が1人1台あるわけではないので、最初の年は6年生を優先に3クラス分をお借りして自由に1ヶ月間使ってもらうということを試してみました。そうすると、見事に使いこなしていて非常に驚きました。プロジェクト学習でどんどん意見交換をして、いろいろなものを創り上げていき、レベルアップしていくんですよね。その姿を見て、私たちの予想を遥かに超えているなと思いました。

 

ー低学年生も同様に使えているのでしょうか?

低学年は無理じゃないかという声もありましたが、昨年初めて1年生への導入を試みました。4年生の児童が1年生のクラスに行き、1年生の間に4年生の子が座って、両隣の子に優しく教えながらも、操作には絶対手を出さないんです。そうして1年生が自分で操作をするように一生懸命説明しながら誘導していくことで、ちゃんと使えるようになりました。今年は3年生が1年生を導く役割を担いました。

 

ー児童同士で教えられたのですか!

はい。従来のように教師が事前に全部わかってからお膳立てして児童にやらせるのとは違う、子ども同士の力です。教師はすぐ教えたがるんですが、自分たちが使う上でわかりにくかったことが子ども目線でわかっているので、子ども達の方が教えるのがうまいんです。子ども達同士の学ぶ力は大したものだということを逆に学ばされました。

 

1年生の授業での活用方法

ー1年生だとどのような授業でどういう機能を使っていらっしゃるのですか?

自分の撮ってきた画像を Google ドライブに保存して、それを使ってみんなで Google スライドを作成していきました。

 

ー1年生でもうスライドを使われているなんてすごいですね。

「秋を感じる」をテーマに、自分たちで自由に見つけて写真を撮り、スライドにして発表するというのがあったんですが、これも感銘を受けました。発表の仕方が「こういう秋が見つかりました!」という発表ではなく、見かけたものを画像で出し「この中に秋はどこにあるでしょう?」とクイズ形式で始めるんです。そのあとの答えのスライドも、自分の撮ったとっておきの画像を画面一面に出して解説する、というような創意工夫がされていました。

発表後に、グループでお互いのを見合いながら、これはもっとこうしようああしようと言っている姿は、6年生がプロジェクト学習でどうしようかと話し合っている姿と変わらないんです。6年生のプロジェクト学習の基礎となるとても貴重な学びの機会だと感じて、とても感動しました。

 

ICTスキルの身につけ方

ー1年生ですでに観客を惹きつけるプレゼンの手法まで学んでいらっしゃるのですね。

はい。ただ、「プレゼンの勉強」という学習は一切していないんです。自分の見つけた秋にいかに興味をもってもらい、伝えられるか。それを突き詰めていくと自然に問いかけをするという本質に行きつくんですよね。「写真の保存方法」「スライドの作り方」といったスキルを教えるのではなく、あくまで必要な学習をしているうちに勝手にスキルが身についていくようです。

 

ー素晴らしいです。ついつい先にスキルを教えて、その後スキルを使った学習へ移る、となりがちですよね。

本校では、『まちごエンジョイラーニング』という総合的な学習の時間があり、学年によって例えば6年生は街づくり、5年生は自然環境、4年生は防災、3年生は街の自慢など大まかなテーマを設定しています。子ども達はそれに対して追究したい課題を見つけ、計画的に調査をしたり、疑問に思ったことをインタビューしたりして、その結果をもとに、仲間と討論していきます。作成するプレゼン資料も、他のプレゼンツールですと“完成して終わり”となるところを、Google スライドだと、作成途中でもばんばんコメントが入ってくるので、どんどんと進化していくんです。

その過程で自然にグラフの作り方を覚えたり、著作権を配慮した画像の取り込み方や出典を明記したりすることもできるようになっていきます。学習の内容を突き詰めていくと自然とこれらのスキルが身につくと考えています。

 

 

休校期間中のICT活用方法

ー感染症対策による休校期間中はどのようにICTを活用をされていたのでしょうか。

当時、本校は端末が6年生の人数分+40台あったのでそれを有効活用しようと考えました。前半は、子ども達に端末が行き届かないご家庭に対して端末の貸し出しを行い、オンラインで学習をしてもらっていました。

後半は、6年生だけの持ち帰りに限定して、Google Classroom で学年全体でやりとりをしていました。4月にクラス替えをしたのに顔合わせはしていないという状態だったのですが、“離れてはいるけれど心は繋がっている”という経験ができました。

 

ー完全なオンラインでのやりとりというのが初めてだったかと思うのですがいかがでしたか?

Google Classroom 内で自由に使える場を作成して使わせていたところ、自ずと児童達から「こうやって運営していこう」という意見が生まれていました。例えば 、意味のないやり取りをやめようとか、Google フォームのアンケートだらけになっているので投稿期間を設けたり「見やすいように整理しよう」という声があがったりして、自分達で Classroom をより良い環境にしていこうというのが生まれて感心しました。

 

ー先生から伝えるのでなく児童たち自らですか!

すごいですよね。一度だけ不適切な投稿があったときに「これは削除します」と伝え、削除したことがあったんです。子ども達は削除された内容を知っているし、それがいけないことだということを改めて理解しますよね。教師により安全に守られている環境でこういう体験の場を与えることは、近年SNSやネットでのトラブルが多い中で、ITリテラシーを経験から学び・身につけるということに繋がるのだろうなと思います。そういう意味でも子ども達にとって貴重な学びの場になっていましたね。

 

ーオンライン上での授業はされていたのでしょうか?

今回の休校措置では一方的な授業配信ではなく、学校が再開した際にスムーズに学習に繋がることを意識して“研究課題”や“コツコツ課題”などいくつかの課題を出して、仲間と意見交換をしながら自主的に取り組んでもらっていました。こういうときだからこそ、「自律した学習者」に育てたかったのです。

学校が再開した今でも、自宅で更に発展課題に取り組んだり、授業だけではまとめきれなかった児童が自宅でじっくり続きを学習するなど、休校期間中の取り組みによって「学校での学び」と「家庭での学び」がうまく繋がっているなと思っています。

 

今後の課題

ー約2年間ICT教育に取り組まれていますが、今後の課題などはありますか?

はい。まず一つは、この2年間とにかくやれることを、学びながら、子どもとともに進んできましたので、まずは、培ってきたことを体系化してまとめたいと考えています。今後教師の入れ替わりがあってもこの学びをしっかりと継承できるようにしていきたいです。

もう一つは、いつでも快適な学習ができるようにより安定したネットワーク環境を構築したいと考えています。

 

ICT総合支援員による変化

ー2020年1月からICT総合支援員*として弊社ストリートスマートがサポートをさせていただいておりますが、なにか変化はありましたか?

*参考)町田市の小中学校3校に学校常駐型のICT総合支援員を派遣しました
https://master-education.jp/column/ict_support_staff_dispatch/

 

臨時休校になる前から来てもらい Google フォームでのアンケート配布と集計方法を教えていただいたりしていたので、休校期間中もフォームを使って児童への体調や状況確認などが実践でスムーズに活用できました。教えていただいてたことがすごく役立ちました。

また、ストリートスマート様には日常的な校務をいかに効率化させるかをご支援していただいており、校務の効率化は子どもの学びの時間に還元できるという大事な視点ですので、その点でもお世話になりました。

 

(Google フォームでの心のアンケートイメージ)

 

ー先生方のスキルやモチベーションの変化はありましたか?

「失敗を恐れず挑戦しよう」という教師が多いのが本校の特徴なのですが、ストリートスマート様のおかげで、元々持っている素質が加速したと実感しています。ストリートスマート様の存在で、意欲が啓発され、同じ資格(Google 教育者認定資格)をとった教師もいるぐらいです。

ICTがいいものだと従来から実感していましたが、ICTのスペシャリストに来ていただくことで本校全体の刺激になっています。もっともっと刺激が欲しいのでこれからも是非来ていただきたいです!

 

いかがでしたでしょうか。町田発未来型教育実証モデル校である町田第五小学校。初めてで分からないことが多い中でも「まずは取り組んでみる」という積極的な姿勢がお話からも終始感じられました。

 

ICT教育推進やGIGAスクール構想に関するご相談はストリートスマートへ

株式会社ストリートスマートは、2017年にGoogle 認定の Google for Education Professional Development Partner(専門的能力開発パートナー企業:「PDパートナー」)に認定されました。そして、これまでの教育機関への総合的なICT導入支援実績が認められ、2020年に国内で初めて Transformation (変革)分野のエキスパートとして Google より認定されました。

自治体や教育現場の皆さまが効率的かつ負担なくGIGAスクール構想やICT教育を推進できるよう、学校常駐型のICT総合支援員各種研修など、ICTの導入から活用推進まで、さまざまなアプローチで皆さまに寄り添った支援を行っております。

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