【わかりやすく解説】これからの時代に求められる「デジタル・シティズンシップ教育」とは。
すぐに使えるオンライン教材も紹介!

全国の自治体で、1人1台端末やネットワークの整備が完了しつつある今、ICT環境を適切に活用して社会参画する能力を養う「デジタル・シティズンシップ教育」の重要性が高まっています。今回の記事では、デジタル・シティズンシップ教育の概要とポイントを説明します。また、最後に総務省や Google が公開している「デジタル・シティズンシップ教育」に関わる教材も紹介します。

これからの時代に必要な「デジタル・シティズンシップ教育」とは

GIGAスクール構想により、全国の自治体において「1人1台端末の配布」「ネットワークの整備」が概ね完了し、教育DX推進における「ハード面」の準備が整いつつあります。実際、令和4年末時点において、日本全国1812自治体のうち1810の自治体(約99.9%)で1人1台の端末が配布済みとなっています。

一方、与えられたICT環境を使いこなすための「ソフト面」の能力向上が課題として浮かび上がってきました。そこで、デジタル技術を正しくかつ積極的に活用する能力を養う「デジタル・シティズンシップ教育」が注目を集めています。ICTインフラが全国の学校に分け隔てなく整備されましたが、こうした時勢に求められた教育活動への取り組み状況によっては学校間で新たな格差が生まれてくるかもしれません。

では「デジタル・シティズンシップ」とは何でしょうか。欧州評議会の「Digital Citizenship Education Trainers’ Pack」によると、「デジタル技術の利用を通じて社会に積極的に関与し、参加する能力」とされています。また「デジタル・シティズンシップ教育」とは、「優れたデジタル市民になるために必要な能力を身につけることを目的とした教育」。要は、情報リテラシーやモラルを押さえた上で自律的にICT環境を活用できるようにするための教育方針のことです。

デジタル・シティズンシップ教育の実践

これまでの「情報モラル教育」

従来、義務教育課程におけるデジタル教育は「情報モラル」という考え方に基づいており、デジタル環境の使用を「抑制・禁止・制限」することで、トラブルを避けることに主軸を置くものでした。教育現場において児童生徒は、先生や保護者が定めたシーンや用途においてのみICTの活用が許されていました。しかし、現代の子どもたちは「デジタルネイティブ世代」と呼ばれ、生まれた時からデジタル機器やネットワーク設備に囲まれて育っています。友人とのコミュニケーションや娯楽において日常的にデジタル環境に触れており、「大人の主導」による抑圧的なデジタル教育のあり方に疑問が投げかけられてきました。

これからのデジタル・シティズンシップ教育に求められること

デジタル・シティズンシップ教育は、「大人の主導」ではなく、児童生徒が「自律的に考えて」ICTを活用し、社会の善い担い手となることを目指します。「シティズンシップ」は通常、公民権や市民権と訳されますが、若者に特定の信念を受け入れさせたり政治活動に参加するよう説得したりすることではありません。むしろ、「新しいテクノロジーがもたらす機会を自ら考慮し、情報に基づいた意思決定や課題解決をする能力を養うこと」が目的なのです。

そこでデジタル・シティズンシップ教育では、ICT活用の「守り」と「攻め」を押さえることが重要になります。ICT活用の「守り」とはインターネットが持つリスクを事前に把握して、自らを守る術を学ぶことであり、情報リテラシーが鍵となります。情報リテラシーには、オンライン上の情報の真偽を判断したり、個人情報を保護をするためのセキュリティ設定を正しく行ったりする能力などが含まれます。また、SNSが発達した現代は、児童生徒も簡単に情報を発信することが可能となりました。情報の信憑性を見極めた上で責任ある情報発信をする能力も欠かせません。情報リテラシーを学ぶことを通して、トラブルを避けつつ、課題解決に必要な情報を取得したり活用できるようになることが重要です。

一方で「攻め」には、社会課題の解決のために新しいデジタル技術を積極的に活用する姿勢や技術の習得をすることなどが挙げられます。学校が設定しているインターネット環境は、外部とのやり取りが禁止されていたり、子どもたちに悪影響のある情報へのアクセスが制限されていたりと、非常に安全性が高いと言えます。こうした特別な環境を「演習場」と捉えることで、ある程度の失敗を許容しつつ子どもたちに積極的なICT活用を促すことが可能なわけです。児童生徒が失敗をしたとしても、その影響は学校の範囲内で抑えることができますし、「ログ」を解析することで対象となる児童生徒に対する適切な指導を通して学びを提供することができます。

デジタル・シティズンシップ教育の実践

では、実際のデジタル・シティズンシップ教育とはどのようなものでしょうか。今回の記事では、総務省および Google がそれぞれ提供しているガイドブックやプログラムを紹介します。

総務省による「家庭で学ぶデジタル・シティズンシップ」実践ガイドブック

(家庭で学ぶデジタル・シティズンシップ 実践ガイドブック P12)

 

総務省が公開している「家庭で学ぶデジタル・シティズンシップ」実践ガイドブックは動画とセットになっており、小中学生の保護者が家庭での教育に活用することを想定して作成されています。デジタル・シティズンシップを「デジタル技術を活用して社会に積極的に関与し、参加する能力」と定義しており、この能力を養うためのテーマとして「①メディアバランスとウェルビーイング」「②対人関係とコミュニケーション」「③デジタル足あととアイデンティティ」「④セキュリティとプライバシー」「⑤ニュースメディアリテラシー」「⑥ネットいじめ・もめごと・ヘイトスピーチ」の6つを設定しています。

 

動画とガイドブックは、導入編と3つの実践編から成っています。動画では、5人家族とその家族を取り巻く会社の同僚や学校の先生などが登場し、各テーマを題材にした架空のストーリーが進行します。動画の内容理解を促す補助教材としてガイドブックを用います。全体を通して、子どもの発達段階に合わせた「持続的な対話」を重視しており、「計画→実行→ふりかえり」のサイクルを繰り返すことで、各テーマの学びを深めていく構成です。振り返りの際にも、ガイドブックに含まれるワークシートを活用します。

(家庭で学ぶデジタル・シティズンシップ 実践ガイドブック P32)

 

例えば、実践編の1つ目は「メディアバランスとウェルビーイング」をテーマとしており、「心身ともに健康で幸せな生活を送るために、メディアの利用と、睡眠や食事、趣味、家族との時間などを、バランスよく両立させること。」を目標にしています。小学校低学年と中高学年それぞれの発達段階の特徴を示しながら、適切な対応方法について説明しています。小学校低学年の場合は、「目の前の刺激に反応しやすく、自制や気持ちの切り替えが難しいことがある」「 見通し・目的を持った行動はまだ十分出来ない」といった特徴があり、対策として「大人が関わりながら子どもが自律する基礎をつくる」「使うときの約束と、おしまいの合図を決める」といった対応方法が紹介されています。各テーマの最後に、「計画→実行→振り返り」を促す仕組みとして、ワークシートが記入例とともに提供されており、親子が対話をしながらデジタル・シティズンシップ教育に取り組める形式となっています。

(家庭で学ぶデジタル・シティズンシップ 実践ガイドブック P36)

Google による「Be Internet Awesome」

Google は、子どもたちが安全にインターネットを活用する能力を身につけることを目的に、「Be Internet Awesome」というオンラインプログラムを提供しています。 本プログラムは2017年に米国で開始し、2022年に日本語版が公開されました。「Internet Awesomeの規範」として、「SMART:用心しながら共有」「ALERT:偽物にひっかからない」「STRONG:秘密を守る」「KIND:思いやりを持つ」「BRAVE:迷ったら相談する」の5つの学習テーマを設定しています。それぞれのテーマを学ぶための充実したPDF教材と、直感的に遊びながら学べる教材として『INTERLAND』というゲームも公開されています。

https://beinternetawesome.withgoogle.com/ja_jp/interland OP画面)

 

プログラムの大きな目玉である『INTERLAND』はブラウザゲームであり、インターネット環境さえあればすぐに遊ぶことが可能です。Internet Awesomeの5つの規範を、ゲームをプレイしながら学ぶことができるようになっており、難易度は低く小さな子どもでも難なくクリアすることができます。

https://beinternetawesome.withgoogle.com/ja_jp/interland/landing/tower-of-treasure

 

例えば、規範の1つである「STRONG:秘密を守る」を題材にした「秘密の塔編」は、メールや個人情報といったプライバシーに関わるデータを集めることから始まります。その後、データの保管先となる「秘密の塔」を、データを奪いにやってくるハッカーから守るために、適切なパスワードをクイズ形式で選びます。こうしたプロセスを通して、「何が守るべきデータにあたるのか」「どのようなパスワードを設定すべきか」といった内容を楽しく学習することができるわけです。

 

メールや個人情報など重要データを集めるミニゲーム

https://beinternetawesome.withgoogle.com/ja_jp/interland/landing/tower-of-treasure

 

最も適切なパスワードを選びハッカーからデータを守るクイズゲーム

https://beinternetawesome.withgoogle.com/ja_jp/interland/landing/tower-of-treasure

 

GIGAスクール構想により、ハード面でのICT環境整備が進みつつある中、子どもたちがICTを活用しながら社会に積極的に関与し参加する能力である「デジタル・シティズンシップ」を獲得することが求められています。「デジタル・シティズンシップ教育」は、”べからず集”となっていた「情報モラル教育」とは一線を画し、情報リテラシーやデジタル空間における倫理観などを押さえつつも、デジタル技術の積極的な活用に力点が置かれています。今回の記事では、総務省と Google が提供する教材を例に挙げ、デジタル・シティズンシップ教育の具体的な内容の一部を紹介しました。どちらの教材も、家庭や学校といった教育の現場ですぐに取り組むことができるものであるため、もしご興味があればチェックしてみてください。

 

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自治体や教育現場の皆さまが効率的かつ負担なくICT教育を推進できるよう、学びのDXから先生方の働き方改革につながる校務DXまで、ご状況・ご要望に合わせた最適な支援をご提案いたします。GIGAスクール運営支援センターICT支援員各種研修、先生のための総合プラットフォーム「master study」など、ICTの導入から活用推進まで、さまざまなアプローチで皆さまに寄り添った支援を行っております。

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