【インタビュー】ICT支援員から、コーディネーターへ。 ストリートスマートのICT支援とは / Education事業部マネージャー 平川 泰輔

1人1台端末が広く行き渡った学校現場では、それらを「どう活かすか」が真に問われる段階に入っています。その活用を一歩先へ進める鍵を握る役割のひとつが、先生と子どもたちのすぐそばで学びを支えるICT支援員です。その役割は、年々深く、そして広がり続けています。

今回は、ストリートスマートのICT支援事業を立ち上げ期から牽引してきた平川に、これまでの歩み、現場で貫いてきたポリシー、そしてこれからのICT支援が目指す姿について聞きました。

答えのない世界からのスタート。―「質問に答えるだけ」なら、僕らがやる意味がない

― ストリートスマートのICT支援は、どこから始まったのでしょうか?

スタートは2020年、都内教育委員会様のICT教育推進事業からでした。当時、一部の学校に Chromebook が先行導入されていて、そのモデル校を支援するところから始まったんです。きっかけは、研修でお会いした教育委員会の方とのご縁で、「ICT支援って、やれますか?」と声をかけてくださったこと。会社として、既に企業向けの導入・活用支援は多くの実績がありましたが、教育現場での支援はここがスタートでした。

― 当時、ICT支援員という存在は世の中に広まっていたのですか?

いえ、まだ「ICT支援員がたくさん雇われる」という時代ではありませんでした。役割としては存在していましたが、「学校のICT周りをまとめてやってくれる人」「端末を管理してくれる人」くらいの位置づけであり、まだまだ重要性のある役割ではなかったと記憶しています。そんな中、この自治体ではまだ世間で「GIGA」という言葉が浸透していない時期からICT環境整備に着手していて、全国的に見てもかなり先進的な取り組みでした。

― 支援は初めからスムーズに進んだのでしょうか?

正直、「すごくスムーズだった」とは言えないですね。教育委員会も学校も、そして私たちも、「何がゴールなのか」という”明確な正解”を誰も持っていなかった。いつまでに何をすれば良いのか」をみんなで模索していた最初の1年は、まず学校現場の状況を理解することに注力しました。とにかく先生方がどんな仕事をしていて、どんな場面でICTを活用しているのかを観察したり、お話を伺ったりすることが多かったですね。

― そこから、どのように「ストリートスマート流のICT支援」にたどり着いたのですか?

ストリートスマートが提供しているICT支援は、正直に言って単価は安くありません。もちろん、それだけの人材を支援員として提供できる質が伴っているからですが、だからこそ「その単価に見合うことはもちろん、単価以上に価値を提供できるとすれば、それは何だろうか」とずっと考えていました。先生からの質問に答えるだけだったり、別に僕らじゃなくてもできるような内容に対応するだけの役割なら意味がないと思ったんです。

 

たとえば、「Google スライド™ の使い方を教えてください」と聞かれて、その通り教えれば一応解決はする。でも、その質問の背景や目的をしっかり聞くと「先生のやりたいことを実現するためには Google フォームの方がベスト」みたいなケースも多いんです。ただの質問や相談へ対応するだけの対症療法的な役割ではなく、その奥にある本当のゴールを先生方と一緒に明確にしてから進める。そこにこれまでストリートスマートが唯一無二の存在感を示してきた強みがあると考えています。

 

端末や様々なインフラを整えたり、準備をしたりすることも大切な役割のひとつですが、それだけでは本当の意味でのICT活用推進は難しいと思っています。
ICTの活用によって、これまでできなかったことができるようになる。いままでのやり方とICTを活用したやり方の両方を、場面や子どもたちの状況に合わせて、先生方がいつでも選ぶことができる。それによって教育の可能性がさらに広がる。
その手助けができる存在であるべきだ、というのが根っこにある考え方です。

教育委員会と学校の「橋渡し」としての役割も

― 一般的には「ICT支援員は先生方や子どもたちをサポートする人」というイメージがあると思います。それ以外の関わり方もあるのでしょうか?

ストリートスマートのICT支援として大きい役割のひとつが、教育委員会と学校現場の「橋渡し」としての役割です。教育委員会の方々は、たくさんの学校を見ていらっしゃいますが、一つひとつの現場の日常までは把握しきれないという構造的な難しさがあります。逆に先生方も日々の業務に追われる中で、教育委員会が描いている方針や、その裏側にある想いや意図までは伝わりきらないことがある。お互いによく知りたいと思っていても、その情報がうまく行き交わない場面があるということにも、支援を進める中で気づきました。

 

私たちはその間に入って、現場で見えてきたことを翻訳しています。活用がうまくいっている学校の取り組みはもちろん、「もう一歩」が必要なところも含めてありのままに状況を共有する。教育委員会が把握したくてもなかなか届きづらい現場の解像度を、日々現場に行けている私たちが補う。これが、自治体全体のICT活用の底上げにつながっていると思います。

 

また、ただ共有や報告をするだけではありません。現場の状況を踏まえ、ストリートスマートとしてどう進めることがベストなのか、その根拠は何か、いつまでにどんな成果を出せるのか。そこまで教育委員会とすり合わせ、一緒に進めています。
この過程を通じて、教育委員会が何に注力したいのか、その背景にある意図まで理解できる。だからこそ、今度はそれを先生方へ翻訳して届ける役目を担えるのだと思います。

― 今年度から、教育委員会そのものの支援が始まった自治体もあると聞きました。

はい。ある自治体では、教育委員会の中の業務そのものをDXしたいというニーズがありました。さまざまな事情からインターネットに接続できる環境が限られていて、その中でなんとか工夫しながら運用されている状況だったんです。そこで、今ある環境でも「Google のツールが使えるとこんなに便利になる」ということを一緒に実証しながら、よりよい環境づくりに向けて段階的に進めています。担当の方が「自分が異動する前に、より良い形に変えていきたい」とおっしゃっていて、その想いに伴走しています。

自治体の実態や目標に応じた支援

― 様々な規模の自治体を担当していますよね。大規模な自治体と小規模な自治体では、進め方を変えているのですか?

規模で変えているというより、教育委員会が目指す方向性や感じている課題など、自治体の実態に合わせています。規模の大きな自治体は、多くの学校や関係者で足並みをそろえながら、丁寧に合意を重ねて進めていく分、どうしても時間をかけて意思決定していくことになります。そのプロセスを尊重しながら、たとえば先生が「AIを使いたい」と前向きになった熱量を、できるかぎり維持しながら次のアクションへつなげていく。そこが私たちICT支援員の腕の見せどころだと思っています。

― 先生方の熱量が下がらないよう、工夫していることは?

「今ある環境でできること」を提案する機会を増やしています。新しいツールを導入しないとできない、と先生方が思い込んでしまうこともあるのですが、話を聞いて「その目的であればCanvaでもできますよ」「実は Google にも同じことができる機能があるんです」とお伝えできるケースは非常に多いんです。
さらに、ツール同士を連携させることで実現できることもあります。こうした提案ができるのは、ストリートスマートが Google・Canva 双方のパートナーであり、支援員全員が両ツールを熟知していること、そして複数の自治体を支援するなかで多くの活用事例を蓄積してきたこと。こうした強みがあるからこそだと思っています。

選択肢を持てることが、人を前に進ませる

― ここで少しパーソナルな部分に踏み込んでみたいと思います。平川さんは元々教育に興味があったのですか?

弊社の支援員メンバーは、教員免許を持っていたり、実際に教員として働いていたメンバーが多くいるのですが、私はこの事業を始めるまであまり教育に近いところにはいなかったんですよね。だから、学校現場や先生についてもっと知らなければ!と思い、支援員をしながら大学で教職課程を学びました

 

そこで「先生になるってすごく大変なことなんだな」ということを身をもって実感しましたし、その中で「先生方がなぜ新しいやり方になかなか踏み出せないのか」ということも、学校という組織を理解し、どういったルールの中で日々働かれているのかが分かるにつれて腑に落ちてきたんです。慣れたやり方を一気に変えるのは、誰だって怖い。それが分かってからは、支援の方法も少し変わってきました。

 

具体的には、「こういう方法もありますよ」と複数のやり方を示して、先生自身が選べるようにしておく。しかも、選んだ後でもすぐ元のやり方に戻れるようにしておく。選択肢があって、いつでも引き返せる。そう思えると、先生方は安心してチャレンジできるんです。そこから、先生との距離感がぐっと縮まっていった気がします。

「先生に好かれよう」としないことが、いい支援につながる

― ICT支援業務を担当しているメンバーも増えてきましたよね。メンバーの育成で、大切にしていることはありますか?

意外に思われるかもしれませんが、「先生に好かれようと思って支援をしないこと」を大切なポイントのひとつとして伝えています。もちろん、先生方と良い関係を築くことはとても大切です。ただ、関係が近くなること自体が目的になってしまうと、本来お役に立つべきことから少しずつずれていってしまう。距離が近づきすぎて仕様外の相談を安請け合いしたり、線引きが曖昧になったりするのは、私たちが目指す支援のかたちとはかけ離れてしまうんです。

 

私たちに支援を託してくださっている教育委員会が望んでいることと、目の前の先生がいま助けてほしいことは、必ずしも同じではない場合もあります。どちらか一方に寄りすぎず、両方にとって本当に価値のある支援は何かを考え続ける。そのためには、プロとして少し引いた視点を持っておくことが大事だと考えています。

― 時には、先生のご要望にそのまま応えないこともある、と。

そうですね。「今はこちらより、こういう進め方の方が先生にとっても子どもたちにとっても良いと思います」と、根拠を持ってご提案することもあります。それは決して突き放すということではなくて、先生の本当のゴールに一緒にたどり着くための関わり方なんです。だからこそ、目先のことだけでなく、その先を見据えた信頼関係を築けているのだと思います。ICT支援員だからといって、なんでもICTを勧めることが正解ではありません。紙のほうが良い場面もたくさんあって、そうお伝えすることも少なくないんです。

― そのポリシーが、なぜメンバーが増えた今も浸透しているのでしょうか?

メンバー全員に必ず「ICT支援ワークショップ」を実施しているのですが、これは絶対に誰にも任せず、私が直接やると決めています。ICT支援への情熱も含めて、自分の言葉で語る。そこがブレていないのは大きいかもしれません。

 

もうひとつは、特定の学校に担当者を固定しないこと。複数のメンバーで学校の状況を把握できているので、一人で抱え込むことなく、チームで本質的な課題解決にあたれます。この仕組みが、やりがいにも組織の成長にもつながっていると感じます。

ICT支援員から「コーディネーター」へ ― これからの役割

― この仕事のやりがいは、どんなところにありますか?

ICT支援は、ICT教育の中で最も現場に近い仕事です。あらゆる関係者の中で、私たちが一番現場の生の声や情報を持っている。ストリートスマートは、その生の声・情報を何より大事にしているんです。

 

Google やCanvaといったメーカーは、よりよい学びや働き方を実現するために、日々プロダクトを進化させています。一方で、学校現場には現場ならではのペースや事情がある。「便利なのは分かるけれど、今の業務の中でどう活かせばよいか分からない」「取り入れたくても新しいことを学ぶ時間がない」と、最初の一歩に悩む先生も少なくありません。その両者のあいだに立って、現場の状況に合わせて正しい順序や必要とされる形へと翻訳して届けるのが、私たちの役割です。

― これから、ICT支援員はどう変わっていくべきだと思いますか?

正直に言うと、「いわゆるICT支援員」という役割のままでは、できることに限りがあると思っています。これからは一段上の 「コーディネーター」としての役割が求められるようになる。自治体の共同調達のスペック指針を出したり、ネットワークの全体設計や予算配分に関与したり。教育もICTも、全体の仕組みもわかる、そんな存在を目指すべきだと考えています。

 

この役割を担える人はまだ全国でも少なく、いわば開拓の余地が大きい領域です。現場を深く知っているからこそ描ける全体設計がある。そこに踏み込んでいけるのが、ストリートスマートの強みだと思っています。これは、単に教育情報化コーディネータとしてではなく、学校の中に入るからこそ見える課題やDXすべき部分を伴走して改善へ進めていく役割を意味しています。

― ストリートスマートとして、これから目指す姿は?

「現場支援」「コーディネート」、そして「コンサルティング」。この3つを併せ持つことを目指しています。これまで積み上げてきた実績を元に、困っている自治体のDX改善を提案したり、アドバイザーとして全体に関わったり。受け身で待つのではなく、現場の声を起点に、より自治体全体の学びを前に進める存在になっていきたいですね。

 

まさに今、自治体向けの生成AIガイドライン作成や、自治体の全教員を対象とした生成AI研修、校務DXの伴走支援、高等学校向けの生成AI授業など、新たな取り組みを次々とスタートさせています。

 

子どもたちに選択肢と、自分で考える力を。先生たちに、安心してチャレンジできる環境を。その先にある学校の未来を、現場の一番近くから設計していく。それが、ストリートスマートが目指すICT支援のかたちです。

 

 

※ Google スライドは、Google LLC の商標です。

 

ICT教育推進や校務DXに関するご相談はストリートスマートへ

株式会社ストリートスマートは、教育分野と働き方の変革分野の2つのスペシャライゼーション認定を持つ Google Cloud パートナー企業です。

自治体や教育現場の皆さまが効率的かつ負担なくICT教育を推進できるよう、学びのDXから先生方の働き方改革につながる校務DXまで、ご状況・ご要望に合わせた最適な支援をご提案いたします。ICT支援員各種研修、先生のための総合プラットフォーム「master study」など、ICTの導入から活用推進まで、さまざまなアプローチで皆さまに寄り添った支援を行っております。

お困りごとやお力になれることがございましたら、お気軽に弊社『Education事業部お問い合わせ窓口』へお問い合わせください。

〈Education事業部 お問い合わせ窓口〉

メールアドレス:info-edu@street-smart.co.jp
お問い合わせフォーム:https://master-education.jp/contact/

 

最新情報は弊社サイトMASTER EDUCATIONからご覧ください。

<MASTER EDUCATION>
https://master-education.jp/

 

※社内利用以外の二次利用は禁止されたコンテンツです。
※本資料に記載されている弊社の商号(株式会社ストリートスマート)以外の商号は
第三者の商号です。また、本資料に記載されているシステム名及びサービス名等、
並びにシステムのアイコン及びユーザーインターフェースのスクリーンショット等に
関する商標権及び著作権等の一切の権利は第三者に帰属しているため、原則として、
当該第三者の許諾なく利用することはできません。

Chromebook や Google Workspace for Education に
関するご相談はお気軽に

お問い合わせ

この記事を読んだ方にオススメの記事