【現役教師による講演レポート①】学習への興味・関心を引き出す G Suite for Education の活用

主催:株式会社ストリートスマート 協力:Google for Education

 

11月29日、関西大学 梅田キャンパス KANDAI Me RISEにて「Google for Education 活用向上セミナー」を行いました。Chromebook や G Suite for Education を導入したものの「学校現場でなかなか活用が進まない」「管理コンソールでどういった管理・運営ができるのかが、いまいちわからず不安に感じている」といった学校関係者・自治体のICTご担当者を対象に、実際に G Suite を活用する現役の先生からの現場での活用事例のご紹介や、Google 社員による管理コンソールの最新のアップデート情報などを詳しくお伝えしました。

Education通信では、セミナーの様子を数回に分けてお届けします。本記事では、現役の先生によるセッションから、1人目の勝田先生の講演の様子をお届けします。

 

「Google for Education 活用向上セミナー」プログラム内容:

第一部
「私はこう使っています 」
Google for Education 活用実践者によるセッション

第二部
「管理コンソールでできること」
最新情報を交えた管理・運用方法について

第三部
Google 認定パートナー ストリートスマートによる、Google for Education を利用した模擬授業体験会

 

本記事では、第一部で登壇いただいた勝田先生のプログラムをご紹介いたします。

 

学習への興味・関心を引き出す G Suite for Education の活用

清教学園高等学校 情報科教諭
勝田 浩次 先生

 

改めて「学習」を考える。学習とは、子どもたちの「興味関心」と「知識の習得」を橋渡ししていくこと。

勝田先生:
本日はよろしくお願いします。私が勤めている清教学園高等学校での、ICTツールの活用方法と、前職での公立高校での取り組みもご紹介したいと思います。

現在所属している清教学園高等学校では、高校生は1人につき1台好きな端末を授業へ持参するという、マルチOS・マルチデバイスを進めています。本日ご説明する『G Suite』に関しては、学校としては、校務効率化のために2007年より導入を行い、個人としては2016年より使用を開始しました。

今日は『G Suite for Education』を活用した、学習への興味・関心を高める工夫をお話したいと思いますが、それを説明する上で重要な2つのキーワードである「学習」と「評価」という言葉の捉え方について、説明したいと思います。

現在私は32歳ですが、私が高校生だった頃は、興味関心は持てる子だけが持ち、それとは別に「知識をたくさん身につけ、大学入試に合格することが大切である」という考え方が、教育であったと思います。そのため、興味関心と授業の内容が大きく乖離していました。

一方で、今教育に必要なのは、「興味関心を大きく向上させながら、それを知識の習得へと橋渡ししていく」といった学習環境の提供であり、それが私たち教師の役割ではないかと考えています。学ぶきっかけを作り、子どもたち自身が「もっと学びたい」という風に感じ、その上で知識の習得をサポートすること。また、逆に、知識の習得を促すことで、その領域への興味関心をさらに高めるということも含め、「興味関心の向上」と「知識の習得」の両者が行き来し、重なっている部分を広げていくことが「学習」だと考えています 。

(勝田先生のスライドより)

 

同様に「評価」についても再考。評価は「適切なタイミングで学習者へフィードバックを返す営み」である。

次に、評価についても考えてみます。文部科学省が公表する文章には、このような記載があります。国の方針としてこのように考えているというのは把握しておくべきだと思います。

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「子供たちにどういった力が身に付いたか」という学習の成果を的確に捉え、(中略)子供たち自身が自らの学びを振り返って次の学びに向かうことができるようにする*
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* 文部科学省HPより抜粋
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/attach/1364317.htm

 

また、評価と評定(成績づけ)の区別を明確にするというのも一つ大事な考え方だと思っていますが、教育関連の書籍*にこのような記載があります。

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「思考力・判断力・表現力」のように、「見えにくい学力」も含め、その実現をめざして学びの過程や成果を可視化していく工夫をしていくのが「評価」という営みである。
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*松下佳代、石井英真ほか「アクティブラーニングの評価」東信堂(2016)

これらを参考に、「評価」とは適切なタイミングで学習者へフィードバックを返すことであると捉えています。これからの話は、今ご説明した「学習」と「評価」といった言葉の捉え方を念頭に置きながら聞いていただければと思います。

 

Google for Education を用いて行なっているのは、「授業の双方向性を高め、必要な支援とフィードバックをする」こと。

数あるICTツールの中で、Google for Education を利用している理由についてご説明します。 先ほどお話したように私が勤めている高校では、「マルチ OS・マルチデバイス」を進めているため、様々な種類の端末を持っている生徒がいます。その中で共通のプラットフォームが必要だと考え、ログインすれば端末を問わずに利用できる G Suite for Education を使っています。

具体的に、Google for Education でどのようなことを行っているかを簡単にお伝えすると、「授業の双方向性を高め、必要な支援・フィードバックを行う」ということです。

授業の双方向性を高めるとはどういうことかというと、具体的には Google for Education 内の『Classroom』を使っており、そこに私が授業で話した内容や、使用したスライドを保存するようにしています。それぞれのクラスごとにページが作れるようになっており、そのページ内で、先生から投稿を行なって生徒に見てもらったり、また、生徒からも投稿や質問を行うことができます。「質問」機能を使うと、先生が問いかけた内容に、生徒全員が回答するという使い方も可能です。

これの何が良いかというと、これまで先生が質問を行った場合、生徒の中でも声の大きい子の意見しか拾えませんでしたが、このツールを使い書き込むことで、子どもたち全員の発言を拾うことができるということです。声の大きい子だけの発言を取り上げることなく、全員の意見を集め、また子どもたちも、他の生徒の発言を見ることができます。

もう一つは、私から資料(テンプレート)を共有し、子どもたちが書き加えていくという使い方をしています。これを用いると、子どもたちは私が作成したテンプレートを基に作業をすることができます。

(スクリーンに投影しながら)例えばこれは、自分の好きなものをお勧めするスライドを作る、という課題を与えた時のものです。 Google スライドを使用し、私が作ったテンプレートを基に、生徒が作成しています。この利点は、生徒が作った資料に対し、コメントを挿入することができる点です。コメントをすることで、生徒へすぐフィードバックを返すことが可能です。「このスライドのタイトルが伝わりやすくてすごくいいね」「ここの構成をこう改善すると、もっとよくなりますよ」といった風にコメントをしています。授業の時間は限られているため、全員にフィードバックができなかったとしても、他の時間を活用して生徒全員にフィードバックを返すことができます。子どもたちが何を作っているのか、何を考えているのかを見える化することができ、大変有効です。

このように子どもたちの学習活動に寄り添い、フィードバックを返すことができるというのがいいところだと思います。

それ以外に、外部のアプリケーションを連携してサインインする回数を少なくすること(SSO:シングルサインオン)もできるようになっています。これをすれば、機能を拡張できると同時に、パスワード入力の負荷を軽減することもできます。例えば、schoolTaktというサードパーティのアプリを入れて、生徒同士の回答を共有し、ワードクラウドにして見える化することもできます。他にも課題を採点し、フィードバックを行うことができるルーブリック機能というものが Classroom の拡張機能(ベータ版)として使えるようになっているので(要申込)、よかったらチャレンジしてみてください。
今お話ししたように、マルチ OS でも G Suite for Education を用いてプラットフォームを作り、子どもたちと情報共有できるのが利点であると考えています。声の大きい子だけでなく、発言できなかった子どもたちの声を拾いながら、授業をつくることができます。
Google for Education 導入した結果、授業外でも、自分の空き時間に生徒からの提出物を確認できたり、心配事をフォローすることができるので、それも良かったなと思います。自分が思い出した時に、ネットワークさえ繋がっていれば確認できます。

子どもたちからも好意的な声が上がっており
「 みんなで使っているという一体感が感じられて面白かったし、楽しかったです。」
みんなで共有できるのと、完全自動保存が便利でした」
「配布された資料が個人端末やスマホで閲覧できる点が非常に便利」
などの感想がありました。

 

Google フォームを用いて、発表の相互評価を行い、子どもたちにより深い省察を促す。

以前勤務していた公立高校での取り組みも紹介します。ここの学校は Wi-Fi が完備されていて、スマートフォンで授業を受けることが学校として認められています。 ICT を積極的に取り入れていこうという方針でした。

本日ご参加頂いてる先生の中では、学校に Google for Education が導入されていないという方もいらっしゃるかもしれないので、子どもたちが G Suite のアカウントを持っていなくてもできることをご紹介します。用いるのは Google フォーム です。「子どもたちが課題の発表をする際に、フォームを用いて生徒からの相互評価を行う」といった活用方法です。

別の生徒の発表を聞き終わった後に、子どもたちは、フォームを用いて評価を入力します。発表を見て、良かったところ・刺激を受けたポイントや、アドバイス、どんなことが自分に取り入れられそうだと思ったかなどの項目をフォーム上に用意しています。

(勝田先生のスライドより 実際のフォームの画面)

 

フォーム を用いると、発表が終わった後すぐに、発表者が他の生徒全員からのフィードバックを得ることができます。さらに、自動的に回答を集計しグラフにしてくれるので、自分の発表に対する評価を定量的に把握することができます。「発表が無事終わってよかった」などの単純なコメントではなく、自分の発表はどうだったか、次にどんな事をすればいいかを考える材料となります。また、「この点がよかった」など他人からのコメントを見ることで、「ここまでできた」という学ぶ意欲の向上や励ましにもなります

また、生徒が1人1アカウント保有している学年の事例を紹介します。
このクラスでは、生徒が課題の発表を行なっている様子を動画で撮影し、それをYouTube で限定公開にてアップし、 Google サイトに貼り付け、他の人からの評価も閲覧できるようにしていました。この時は Classroom を使用していなかったため、手軽にサイトをつくることができる Google サイトを私が作成し、授業内で使用した資料もアップしていました。
そうすることで、自分の発表を客観的に見返したり、自分で学んだことがすぐ確認してもらいたいという狙いがありました。ポートフォリオとしての活用も可能です。過去に学習した内容をそこに行けば見ることができ、自分の足跡を振り返ることができることで、次に何をすればよいかというアクションが明確になるため、学習内容を残しておくことは重視していました。

こちらも生徒からの声をご紹介します。
「簡単にスマホを使ってプレゼンできることを知ったので、社会に出ても使えると感じた 」
「 授業でやっている内容の続きを、家でもできるため、こだわって作ることができていいなと思いました」
「すごく助かりました。授業が週一で作業場が学校にしかないと、家でいいアイディアや材料が見つかってもすぐ活用できないけど、家でもできることで充実したプレゼンをつくることができると思いました」

 

まとめ:Google for Education を活用することで、子どもたちの学びたい意欲を高め、志の実現を支援する。

本日の内容をまとめます。最初に、「興味関心を向上させること」と「知識を習得すること」の橋渡しが学習であるとお話しました。その上で、適切なタイミングで、今まで何を学び、次に何を学んでいくべきなのかを知らせながら、授業をつくっていくということが大事だとお伝えし、その中で Google for Education はどのように活用できるか、Classroom やスライド、フォーム、サイトなどの具体的な活用事例を交えてお話しました。

Google for Education の良さは、子どもたちに即座にフィードバックできることや、彼らが何を考えてるのかを見える化できたり、やりたいことについてコミュニケーションを取れるところが素晴らしいポイントだと考えています。 子どもたちの学びたい意欲を高めることで、自分がどんな人間になりたいのか、どんな志を実現したいのかを支援できるというのが、私たちの仕事のいいところだと思います。それをより高めていくために、こういったツールの活用をおすすめします。

12月にGEG(Google Educator Groups)のワークショップを行います。会場は、大阪市内の学校ですので、よければぜひご参加ください。

 

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12月15日
GEG Sakai #04
結局、「評価」って何?
@大阪市立新巽中学校
https://sites.google.com/view/geg-sakai/

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いかがでしたでしょうか。今回は「Google for Education 活用セミナー」内で、勝田先生に登壇いただいたパートの様子をお届けしました。本セミナーは、その他の部分もレポートをお届けする予定です。ぜひご覧ください。

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