【現役教師による講演レポート②】生徒と教員をつなぐ!公設民営学校の挑戦

主催:株式会社ストリートスマート 協力:Google for Education

 

11月29日、関西大学 梅田キャンパス KANDAI Me RISEにて「Google for Education 活用向上セミナー」を行いました。Chromebook や G Suite for Education を導入したものの「学校現場でなかなか活用が進まない」「管理コンソールでどういった管理・運営ができるのかが、いまいちわからず不安に感じている」といった学校関係者・自治体のICTご担当者を対象に、実際に G Suite を活用する現役の先生からの現場での活用事例のご紹介や、Google 社員による管理コンソールの最新のアップデート情報などを詳しくお伝えしました。

Education通信では、セミナーの様子を数回に分けてお届けします。本記事では、現役の先生によるセッションから、2人目の原田先生の講演の様子をお届けします。
(1人目の勝田先生の講演の様子はこちらからご覧いただけます)

 

「Google for Education 活用向上セミナー」プログラム内容:

第一部
「私はこう使っています 」
Google for Education 活用実践者によるセッション

第二部
「管理コンソールでできること」
最新情報を交えた管理・運用方法について

第三部
Google 認定パートナー ストリートスマートによる、Google for Education を利用した模擬授業体験会

 

生徒と教員をつなぐ!公設民営学校の挑戦

(原田先生のスライドより)

大阪市立水都国際中学校・高等学校 理科教諭・情報科主任
原田 有 先生

 

生徒と教師をつなぐ!公設民営学校

原田先生:
はじめまして、よろしくお願いします。大阪市立水都国際中学校・高等学校の原田有です。私は水都国際で理科を担当、情報科の主任も行っています。また、Edcampという教育イベントを開催したり、国際バカロレアDPのTOK(Theory of Knowledge)という科目も研究しています。今後はGEG(Google Educator Group)のOsaka Cityのリーダーを担当する予定です。

水都国際の特長をご説明します。本校は全国初の公設民営学校で、設置者は大阪市で、管理・運営は学校法人大阪 YMCAが行なっています。今年の4月から開校した中高一貫教育校で、現在は中学1年生と高校1年生の2学年が所属しています。各学年80名ずつなので、現在の生徒数の合計は160名です。

 

 

(原田先生のスライドより)

本校は英語教育、国際理解教育、そして課題探求型授業に力を入れています。学校教育目標は「社会に貢献する協創力を磨く」と定めており、英語を学び世界へ飛び立てるようなグローバルな人材を育てていくことを目標としています 。

英語教育に力を入れているため、全教員のうち日本人が約60%、外国人が約40%所属しています。英語で行う授業は、英語・数学・理科の他に、Global Studies/Global Issuesという本校の設定科目や、Community&Actionという独自の授業もあります。高校1年生に関しては英語2級以上のレベルの生徒も多く入学しており、帰国子女の生徒も在籍しております。中学生は入学後に実践的な英語学習を実施するという方針です。また、本校は国際バカロレア DP の認定校に向けて準備をしています。

本校の ICT 環境に関してご説明します。全館Wi-Fi環境が整っており、全教室にホワイトボードとプロジェクターを設置しています。高校生に関しては一人一台パソコンを購入し、中学生は学校からChromebook を貸与しております。そのため生徒一人につき必ず一台パソコンを保有しているという環境を実現しています。

教員から生徒へのコミュニケーションやサポートというのは、各学校かなり工夫されているのではないかと思います。特に本校では「英語を活用した授業」、そして「反転学習」というものにフォーカスしておりまして、それにより生徒の学習をサポートし、生徒がさまざまな課題や活動に取り組むことができるような環境を用意しています。また、教科では測れないようなスキルも向上させるためのアクションを起こしています。

まずは教科指導についてです。本校では、多くの授業で Google スライドを活用しています。 Google スライドを使えば、オンライン上でのコミュニケーションが可能になるため、生徒一人ひとりのサポートをより手厚くすることができます。生徒一人一人の理解度を把握したり、必要な指導を行なったりといった「机間巡視*」を容易にするのではないかと思います。

(*机間巡視・・・授業中に教師が生徒の机の間を巡回することを指す専門用語の一つ)

 

(スクリーンに投影しながら)こちらは数学の授業です。数学の授業では「反転学習」を重視しており、本校の担当教諭が用意したYouTube動画を家で見てから、授業に参加してもらうという取り組みを行なっています。YouTube の動画ですが、本校の教員が0から作成している動画で、YouTubeの非公開のアカウントにアップしています。これをすることで、生徒の事前勉強を可能にしています。既に動画を確認してから授業に臨むため、授業ではより深い内容を扱うことができます。

また本校では、アドオンを活用しています。ホワイトボードに投影している内容を、生徒一人一人のパソコンに映し出すという機能です(Pear Deckというサービスを活用)そうすることで、ホワイトボードの内容をどの生徒でも近くで確認することができ、後ろの席から文字が見えにくいという問題を解消し、円滑に学習に励むことができます。

本校では、ほぼ全ての授業で Classroom を活用しています。ショートホームルームや学校行事など、それぞれの組織ごとにクラスを設定しています。Classroom の利点は、提出期限の管理を容易に行うことができることです。スライドや課題を Classroom に保存することによって、配布や回収にかかる時間を削減する工夫を行なっています。それにより、印刷物が不要となりペーパーレスになるほか、生徒がPCだけではなくスマートフォンでも自分たちの課題や資料を確認することができるというメリットがあります。

 

 

本日の大事なお話のひとつとして、生徒から教員に対するコミュニケーションやフィードバックをどのように行っているかをお話したいと思います。

教科によって形成的評価も Google フォームを活用しています。それぞれの授業において、どこまで理解が進んでいるかを生徒にフィードバックをしてもらうことにより、教員は「次の授業はこのように展開しよう」という計画を立てやすくなります。
このように、生徒から教師へフィードバックアクションを行うことで、授業の理解度をさらに深めることができます。そのためのツールとして Google for Education を活用しています。

ここからは、生徒の取り組みについて紹介します。今年の4月に開校したため、学校説明会の頻度が高いのですが、本校の学校説明会では、生徒自身がプレゼンテーションするという取り組みを行なっています。そうすることで、生徒が0からGoogleスライドを作成し、自分たちの学校生活や本校の取り組みを改めて見直すきっかけになっています。こうしたICT のスキルやプレゼンテーションのスキルを教科外で計ることで、それらの機会を生徒に提供することを大切にしています。

次に、スポーツフェスティバル(体育祭)やスクールフェスティバル(文化祭)についてです。本校では、生徒主体でこうしたイベントを計画、運営、実行するようにしています。教師はそれをサポートする体制です。準備段階では、Google ハングアウトGoogle ドキュメント、Google フォーム、Google カレンダーなどのアプリケーションを活用しています。本校では連絡手段としてハングアウトを多く活用しています。水都国際のアカウントで管理することができるため、プロジェクトの進行具合を教師も把握することができます。

本校では、部活がないのですが、GAPS活動(Global Action Project in Suito)というものを設定しています。
GAPS活動は、生徒がクラブ活動やプロジェクトを1から主体的に作り上げていくものです。例えば、宇宙植物学などのプロジェクトがあります。申請の流れは Google ドキュメントで作成し、安全面や活動計画を Google スライドにまとめ、プレゼンテーションを行います。そのひとつに、数学研究部というものがありまして、こちらは文化祭において「SDGsの17個のマークそれぞれを、数学の授業で紹介した関数アプリを使って表現する」という展示を行いました。中学1年生が授業外で、自発的に実施したもので、多量の関数を使用しているのですが、これもパソコンを用意している環境だからこそできるものだと思います。それぞれの関数は大学で学習するレベルのものもございます。

 

(原田先生のスライドより)

本校では、各教科ごとにプレゼンテーションを行う機会が非常に多いのですが、生徒たちはプレゼンテーションにだいぶ慣れてきています。今年9月EDIX関西では、本校の生徒が登壇させていただきました。オーディションに勝ち抜いた4名の生徒は、プレゼンテーションの準備段階で、 Google スライドや Google フォーム、ハングアウトを組み合わせて使用し、ゼロからスライドを作り、登壇しました。その1人の生徒が、「G Suite for Educationに関するGAPSを作って、学校生活での活用方法を提案したり、生徒からの相談に答えたりといった活動を行いたい」と発案し、現在は Google サイトを使って、このGAPS活動を推進していくための準備を行っている段階です。

 

続きまして、教員サイドの校務分掌をどう効率化しているかというお話をさせていただきたいと思います。本校では生徒のアクションや課題を管理するためにも Google for Educationを使用しています。例えば、試験や小テストは Google フォームを使って行っています。
Google フォームを使うと、採点やフィードバックの設定も容易に行うことができます。さらにペーパーレスであり、カラーで生徒に問題を配布することができます。(スライドに投影しながら)こちらが実際の問題です。事前に設定しておくと、振り返りを早く行うことができます。

また、教師間でのミーティングはハングアウトや Google ドキュメントを活用しています。本校は外国人教員も多く所属していますが、これらのツールを利用すれば日本人が聞き取れなかった英語も可視化することができ、円滑にコミュニケーション行うことができます。
Google for Education を活用し、校務分掌を効率的に行うことにより、生徒一人ひとりに対応する時間を長く取ることができます。放課後学習であったり、個人的な学習サポートであったり、そういった時間を増加させることを目標としています。

先生はそれぞれ、「自分らしく指導したい」「校務分掌の効率を上げたい」「こんなことに取り組んでみたい」「生徒の理解度をもっとチェックしたい」という悩みがあると思います。それぞれの悩みを解決できるのが、Google for Education だと考えています。

 

(原田先生のスライドより)

 

いかがでしたでしょうか。今回は「Google for Education活用セミナー」内で、原田先生に登壇いただいたパートの様子をお届けしました。
その他のセッション(【講演レポート①】学習への興味・関心を引き出す G Suite for Education の活用)も、ぜひご覧ください。

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