【ICT支援員まとめ:前編】支援内容や成果、学校現場の状況などを解説します
現在、日本全国の小中学校は「GIGAスクール構想」による1人1台端末の整備を実現させ、本格的にICT教育へ切り替える大きな変革期です。株式会社ストリートスマート(以下、弊社)では、本質的なICT教育を推進できるよう、ICTと先生方を繋ぐ役目として、学校常駐型のICT支援員を行っています。
今回は、弊社のICT支援員である平川と佐藤に、ICT支援員に関する具体的な話をしてもらいました。前編では実際の支援内容や学校現場の状況などをしております。ぜひご覧ください。
(左:平川 / 右:佐藤)
目標設定から授業の帯同まで──ICTと先生を繋ぐICT支援員
ーストリートスマートのICT支援員の活動を教えてください
平川:まず、自治体様のお話を伺わせていただき計画を立てることから始まります。Google for Education(Chromebook とGoogle Workspace for Education の総称)を既に導入されている自治体様ですと、支援してほしい内容がある程度決まっていることが多いので、自治体様のゴールに向けた計画をご提案し、合意を頂き進めていきます。
これから導入する自治体様ですと、明確なゴールや具体的なご要望までたどり着いていないことが多いため、ヒアリングしながらご予算に合わせて、期間や実現できる効果、目標設定などご提案させていただきます。
ーその後は実際に学校へ行き支援されるのでしょうか?
平川:はい、実際に学校現場へ行くと見えてくる現状や課題もあるので、支援内容を臨機応変に修正して進めていきます。私たちに任せてくださる自治体様の場合は、現場と私たちの判断でスピード感を持って対応しています。
▲ICTと先生を繋ぐICT支援員
ー具体的に学校ではどういう支援をされるのでしょうか?
平川:先生全体に向けた Google for Education の基礎や実践に関する研修や、授業の帯同、個別質問の対応などです。また、お忙しい先生方が隙間時間でも活用を進めていただけるように、学習支援サイト「Master Learning」や、書籍「できる Google for Education クラウド学習ツール実践ガイド」などもご提供しています。
ー先生の反応はいかがですか?
佐藤:大変喜んでいただいています。新学習指導要領によって、プログラミング教育の必修化や外国語教育の指導強化など、大きな教育改革が行われています。プラスして2020年はコロナ禍の対策を考えるなど、変化が著しく先生方の負担が大きい状況です。
そのような状況下で、当初の予定を前倒して1人1台端末が導入されているので、十分な事前準備が困難です。ですので、授業に帯同させていただき、いざというときに聞ける人がいる、というのはとてもご好評頂いています。
▲授業サポートの様子
単なる“ハードの使用”は、本質的な“ICTの活用”とは異なる
ー実際、学校での端末活用度合いはいかがでしょうか?
平川:特定の自治体に限らず今(2020年11月現在)、日本全国どこの学校でも一律に言えるのは、活用している先生とそうでない先生の差があり、活用している先生はどこも少数である、ということです。苦手意識や知識レベルなど複合的な要因がありますが、活用する先生はどんどん使いこなしていき、何もしない先生はそのままというのが現状かなと思います。
ーそうなると、どんどんその差が広がっていきそうですね。
平川:仲の良い先生同士や職員室での席の近さ、学年や教科が一緒など、関係が近い先生同士では情報共有がされやすい傾向にあります。ですが、学校全体で情報共有ができているかといったらそうではありません。そうなると、情報の格差が生まれ、活用度合いにも個人差が生じます。
使うスキルと教えるスキルは別物なので、得意な先生が他の先生に、ご自身の仕事が忙しい中で十分な教える時間を割けるかといったら難しいのが当然で、そういった面でも私たちのような役割は大切だと実感しています。
ースキルだけでなく情報共有の面でも差がひらきやすいのですね。
平川:「Chromebook を使っていますか?」に対して「使っている」と回答してくださっていたとしても、実際は本質的な活用がされていないケースがあります。
ーそれはどういうことでしょうか?
平川:今まで使用していた端末(主にWindowsのPC)から Chromebook になり、単なる“ハードの代替え”として使っている場合、Chromebook ならではの機能やアプリを本質的に使いこなせているケースは少ないです。Chromebook は、いわゆるノートパソコンの見た目をしていますが、Windowsをはじめとする他の端末とはOSの違いだけではなく、端末やアプリの役割や使い方、活用できることも違います。そこを理解しておかないと、本質的な活用にたどり着くのは難しいと考えています。
私たちは、Chromebook や Google Workspace for Education だからこその機能を活用できているかどうかが重要なポイントだと捉え、これまでできなかったことが叶うツールをぜひ最大限活用していただきたいと考えています。
ー端末の根本的な違いを知る機会がないと、単なる代替え機という認識になりそうですね。
平川:Chromebook や Google Workspace for Education は、いままで学校で使用されてきたICT環境とは本質的に異なるものを提供しています。使い方よりも先にその違いや特徴をご理解いただくことが、結果としてICT活用の促進に繋がります。
そのため、Chromebook や Google Workspace for Education の特徴や概要を掴むための「基礎研修」は必ず最初の段階で行わせていただきます。
▲先生方への研修の様子
ー授業での活用度合いはいかがですか?
佐藤:Google Workspace for Education の便利さを理解された先生方は、意欲的に授業に取り入れようとしています。
ーどのアプリが積極的に使われているのでしょうか?
佐藤:一番多いのは Google フォームです。先生方はテストや課題などを「配布・回収・採点・集計」することが多いんです。Google フォームだと一連の流れをペーパーレスで自動でできるので活用されることが多いです。
それ以外にも、徐々に Google Workspace for Education の様々なアプリを授業だけではなく、校務にも活用をいただけるようになってきました。
ICT教育が推進されるためには1人1台の端末は必須
ー「GIGAスクール構想」で、1人1台端末の整備を2020年度中に実現させることが掲げられていますが、配布状況はいかがですか?
平川:2020年11月現在で、少しずつ1人1台分の端末が届き始めている状況です。そのため、学校内すべてのクラスで共有の Chromebook として、予約制のように使っている学校様がまだまだ多いですね。
ー共有だと、使いたくても使えないことが発生しそうですね。
平川:その通りです。予約制だとICTが苦手な先生が授業で使おうと思っても、使いこなせる自信がなかったり、得意な先生にどうしても遠慮してしまうので、予約するまでに至らないことが多いようです。
とにかく使ってみることが活用する第一歩になるのですが、気軽に使えるほどの台数がまだ整備されていない状況です。そうなると、授業においても使う先生と使わない先生の差が開いていってしまいます。
佐藤:先生方へのアンケートでも、「現在の環境では、使いたいときに使えない」というお声が多いです。
〈参考記事〉
町田市ICT支援員半期アンケート報告
支援期間は最低1年、長ければ長いほど活用度合いに大きく影響
ーストリートスマートがICT支援員として関わることでの成果はいかがでしょうか?
佐藤:2020年4月から支援している自治体様では、支援開始半年時点で7割程の先生方に Chromebook や Google Workspace for Education ならではのメリットを実感していただき、前向きに取り組み始めていただけたと思っています。
便利さをご理解いただくという第1ステップを終えたら、次は実際に授業で活用してもらうことを第2ステップとしているのですが、便利であると理解してもなかなか授業での活用に至らない先生が多いことが分かってきました。
「確かに便利だけど、授業で活用するイメージが掴めない」というお声をよくいただきます。そこで今後は、授業の計画段階からお手伝いさせていただいたり、授業を拝見して、ツールのより効果的な活用方法をご提案させていただいたり、先生方とタッグを組んで授業での活用を実現していくことに注力していく予定です。
(ステップごとの課題・支援策一覧表イメージ)
平川:私たちは画一した支援ではなく、学校の活用状況に合わせた支援を行なっています。ある学校では保護者に対し Google フォームによる欠席連絡の運用を開始したり、オンライン配信による体育祭を実行したりしています。また、全体的に活用が進んだ学校には、活用傾向を分析してより高度な活用法をお伝えし、教材の作成や研修発表の支援なども行っています。
〈参考記事〉
町田市全62校へのICT支援員派遣レポート
▲運動会にICTを活用されている様子
ー支援期間はどれくらいが適切だと思いますか?
平川:最低でも1年は必要だと考えています。
ICT支援員は単発で研修して終わりではなく、現場に入り込んで先生に寄り添い支援していくことが大切です。それには信頼関係の構築が何よりも重要で、その構築に時間が必要です。
ー信頼関係が最も大切なんですね。
平川:はい。例えば3ヶ月や半年の支援だと単発な質問になりがちですが、1年以上だと「こんな風に変えていきたいのだけど」と、根本的な相談や質問をしていただけるようになるんです。また、回数を重ねて顔馴染みになっていくと、より気軽に細かい質問もしていただけるようになります。
初期からみんなが使い出すまでに1年は必要であり、長ければ長いほど倍々で活用度合いが増すと思います。
佐藤:私の前職は小学校の教員だったのですが、教員目線からしても1年は居て欲しいと思います。例えば12月終了だと「1月の行事を相談したかった」ということが起こるんです。一年を通し全ての行事を支援員と過ごすことで、先生自身もICTのいろんな活用方法が経験できると思っています。
また長期休みもあるので、その期間を利用して全体研修を設け、一気に全体の底上げもできると思います。
いかがでしたか。ICT支援員とは何か、そして学校でのICTの活用状況や、適切な支援期間などを聞かせていただきました。
後編では、ストリートスマートが考えるICT支援員の在り方や、支援員の必要性、またICT教育は学校に必要なのか?など、切り込んだお話を展開しております。ぜひ後編もご覧ください。
【ICT支援員まとめ:後編】ICT教育の必要性や支援員のあるべき姿などを解説します
ICT教育推進やGIGAスクール構想に関するご相談はストリートスマートへ
株式会社ストリートスマートは、2017年にGoogle 認定の Google for Education Professional Development Partner(専門的能力開発パートナー企業:「PDパートナー」)に認定されました。そして、これまでの教育機関への総合的なICT導入支援実績が認められ、2020年に国内で初めて Transformation (変革)分野のエキスパートとして Google より認定されました。
自治体や教育現場の皆さまが効率的かつ負担なくGIGAスクール構想やICT教育を推進できるよう、学校常駐型のICT支援員や各種研修など、ICTの導入から活用推進まで、さまざまなアプローチで皆さまに寄り添った支援を行っております。
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