【ICT教育事例】人口約1,900名の離島でICTの活用が進む理由とは|伊豆諸島 神津島村様

株式会社ストリートスマートは、GIGAスクール構想による教育ICT化の支援のひとつとして、ICT支援員の派遣を行っています。これまで、東京都町田市、伊豆諸島、神奈川県、長野県中川村など、自治体の規模や活用状況もさまざまな学校へ支援してまいりました。

実際に学校へ訪問し、二人三脚で支援させていただくからこそ見える学校現場のリアルがあります。本記事では、ICTの活用が進んでいる伊豆諸島 神津島村様を事例に、ICT化が促進されている理由を紐解いていきたいと思います。

神津島村について

東京から南へ約180km、伊豆諸島のほぼ中央に位置し、東京都初・日本で2番目の星空保護区に認定された神津島村。小中学校は、神津島村立神津小学校と神津中学校の児童生徒合わせて163名。島には信号がひとつしかなく、自然豊かな人口1,877名(2022年1月4日現在)の島。

 

2021年3月に Chromebook™ を配布

神津島村様が Chromebook を配布したのは2021年3月。弊社のICT支援員もそのタイミングで訪問し、1時間目から6時間目で全学年にログインフォローを実施し、先生向けの Google for Education™ 基礎研修を実施しました。導入当初から、神津小中学校の先生方は活用に非常に前向きで、既にできることから次々と実践されているのが印象的でした。

 

島の小コミュニティを活かした活用の好循環

「まずは使ってみる」「厳しい制限ありきで進めない」と文部科学省も発信しているように、ICTに対して臨機応変な環境であることは、活用が促進される要素の一つです。
その点、神津島村様はフットワーク軽くアクションを起こすことを大切にされています。

 

「現場の必要な要望にはできるだけ早く応えよう」という教育委員会様のスタンスの元、児童生徒・教員管理職・教育委員会の三者の距離が近いことを活かして、現場からの要望にスピーディかつ臨機応変に対応しており、先生方にとって活用を進めやすい環境がつくられています。

 

島内の小学校と中学校は定期的に連携をとることで、Chromebook の活用事例や子どもたちのICTスキルの状況なども共有しています。
また、島全体で子どもたちを見守る島特有の環境は、学校外での端末の扱いや活用に対して、誰かが見守り間違った扱いには注意する、といったセーフティーネット的な役割を果たしており、先生だけではなく、子どもたちにとってもICTを活用する上で非常によい環境が作られています。

 

結果、使いやすい環境→使ってみる→困ったことは相談→すぐに解決へ動く→島内で事例を共有→また使ってみる、という好循環が生まれています。

 

ICTに強い副校長先生の存在が現場の架け橋に

神津島村様のICT化が促進されている二つ目の理由に、管理職のスタンスが大きく関わっています。神津島村の管理職の皆様は、ICTの活用に非常に前向きで、Chromebook の活用法をどんどん提案しています。

 

特に神津中学校の副校長先生はICTに強く積極的に使われているため、先生方からの要望を理解し判断できるだけではなく、校長先生に相談が必要な場合でも、学校全体を意識した管理職目線で「なぜ必要か」「それによってどうなるか」と相談できるため、結果的に先生方にも恩恵がもたらされています。

 

以前、ICT支援員による研修時にこんな一コマがありました。
その日は、『Google Apps Script(GAS) を使った Google スプレッドシート™ から Google フォームを生成する方法』を教えてほしいとご要望があり、放課後研修を実施したのですが、研修が終わると「期末考査をこの方法でやってみよう!」とさっそく副校長先生からのご提案。「できる教科で使ってみます!」と、その場で次のアクションが決まっており、ICTに対してポジティブに進めている様子が見受けられました。

 

ほとんどの先生が研修後も教室で、「どう使う?ここはどうしようか?これならアレにも使えるんじゃない?」と話されており、知識をすぐ実践に取り入れようとするスピード感と、先生同士で自走している様子が印象的でした。

 

管理職がリーダーとフォロワーの両方の立場を

必ずしも「ICTに前向き」なのと「ICTが得意」はイコールである必要はありません。神津島村の管理職の皆様は、ICTに関して苦手なことや分からないことも発信しています。

 

神津島村様の素晴らしいところは、ICTが分からないから使わない・制限する、とブレーキになるのではなく、管理職として、活用促進の旗振りをする“リーダーシップ”と、先生方のチャレンジを応援し臨機応変な対応策をとる“フォロワーシップ”の両方の立場をとられていることです。

 

未体験の領域へ踏み込むのは、管理職も現場の先生も同じこと。やってみないとわからないこともあります。そんな状況でも、旗振り役としてリーダーシップをとるだけでなく、何より活用のブレーキにならない管理職の皆様の在り方が、ICTの活用が促進されている理由の一つではないかと思います。

 

校内全体で Chromebook を活用推進!子どもたちからの自発的な活用も

学校現場の活用の取り組みとして、児童生徒にある程度の活用裁量を与えています。

  • Chromebook の活用は毎時間OK
  • 持ち帰りも前提とした活用
  • 児童生徒から Google Classroom への発信OK

など、子どもたちにとってICT機器はこれからの時代に重要であることを鑑み「許可」を前提に活用を進めています。

 

神津小学校では、特に3年生以上の活用が進んでおり、子どもたちだけでも活用ができる状況です。先生方も日々活用のタイミングを探しており、学校全体として前向きに活用を進めようというポジティブな空気が流れています。

 

神津中学校では、授業での活用も先生各人で前向きに実践されており、自走されている状況です。

 

端末の導入から約1年経ち、さらに Chromebook を文房具のように日常使いするために、 Chromebook に触れる機会を増やす取り組みがされています。

 

例えば、児童生徒の皆さんが Google Classroom 上で情報や気付きを発信し、それに対して他の人がしっかりとリアクションをとるようにしています。リアクションがあることで「また投稿しよう!」「私も投稿してみたい!」とますます活用する空気になっており、着実に学校全体での活用率が向上しています。

 

ICT支援員として、支援する学校様にいつもお伝えしているのが『スモールステップでの習慣化』の重要性です。ICTはスマートフォンと同じで慣れが必要で、Chromebook を触ることを習慣化して慣れることで、児童生徒・教員双方で文房具化が進みます。
例えば、毎朝登校後に必ず Chromebook を開いて先生からのメッセージに返答する、などのスモールステップからぜひ取り入れていただけたらと思います。

 

Google 環境をベースに学校を再構成

学校によっては、これまで使っていたツールと、GIGAスクール構想によって導入されたツールが異なる学校もあるかと思います。神津島村様も例外ではなく、これまで他の多くの自治体様と同じくOffice 365を利用されていました。

 

新しいツールの導入時は、どうしても従来の使い慣れているツールを継続して使いがちですが、神津島村の先生方は早々に Google for Education を活用するメリット(自動保存・共同編集・履歴からの復元・ファイルのドライブ検索など)を理解され切り替えられました。

 

従来のMicrosoft PowerPointの資料も、多くの先生方が既に Google スライド™ への作り直しが完了しており、新たに作る資料は Google スライドで作成する文化になりつつあります。
また、Google for Education によって先生方の校務がどれだけ減らせるのかをしっかりと見据えられており、校長先生やICT推進担当の先生方が情報を収集し発信源となることで、Google 環境をベースとした様々な活用が進んでいます。

▲職員室前後にディスプレイを設置
連絡や従来黒板で伝えていたものをデジタル化し、ペーパーレス・校務効率化を実施。デジタルで履歴も残っているため過去の記載も簡単に確認できるなど、先生方にも大好評!

 

離島の環境を活かしてICT化を促進し、離島のハンデをICTが超えていく

これまで、離島の教育環境は、距離などの物理的な制約からハンデがあると言われていました。子どもたちの少なさから生まれる単学級でのコミュニティの固定化、他学年も一緒に授業を受ける複式学級による個別学習の難しさ、そして学習塾が無いなどの学校外での学習環境の少なさなどが挙げられます。

 

そんな中、教育のICT化はそれらを埋めるだけではなく、強みにしつつあります。
神津島村の小中学校では、島を渡らずともICTによって遠方の先生などから研修や講話を受けられるようにしており、オンライン上でさまざまな方とコミュニケーションをとっています。離島の子どもたちは、他と比べると出会う大人や子どもの人数が限られてしまいがちですが、それを打開できるのもICTの強みではないかと思います。

 

逆に、島ならではの目の届くコミュニティだからこそ、現場の相談や問題を教育委員会がすぐに解決できることは間違いなく大きな強みになっています。
また、人数が少ないクラスだからこそ、積極的に主体的な学びを子どもたちにチャレンジさせたり、新しい学びを取り入れやすかったりと、神津島村の皆様は今ある環境を強みに変えています。

 

同じ規模感の自治体や学校は他にもありますが、やはり離島というのは特殊な環境。しかし、教育のICT化に関しては他の自治体と変わりなく活用が進んでおり、未来へ羽ばたく子どもたちが育っています。
神津島村様は、今の時代に合ったスピードでICT活用が臨機応変に行われています。

 

神津島村様より|どん欲に新しい使い方を吸収していく姿勢をもてるようになり、高校との連携も進めている

■神津島村立神津小学校 GIGAスクール担当者様

「ストリートスマートの平川さんには、1年間に5、6回もご来島いただき、本校の教育活動をサポートしていただきました。本校は Chromebook 導入初年度であったため、全教職員が手探りの状態でしたが、きめ細かいサポートをしていただき、スムーズに導入を図ることができました。
平川さんには、児童対象に簡単な使い方のレクチャーをしていただいたり、教員主導の授業をアシスタントとしてサポートしていただいたりしました。また、放課後にはこちらの要望に応じて実践事例等を紹介する研修を開いていただき、さらには、各教職員の個別の質問にも丁寧に応じていただきました。
ストリートスマートさんの協力があり、今ではすべての教職員が自信をもって指導に当たれていますし、児童たちも Chromebook を文房具のように使えるようになってきています。もちろん、教員も児童も、すべての機能を完ぺきに使いこなせるわけではありませんが、Chromebook の使用に関しての抵抗感は全くなく、どん欲に新しい使い方を吸収していく姿勢をもてるようになっています。
とても感謝しています。本当にありがとうございました。」

 

■神津島村立神津中学校 ICT推進担当 教務主任 神田宜典 主幹教諭

「神津中学校では、先生方に授業で積極的にICT機器を活用してもらうため、使用感やこういう使い方ができないかなどの意見を集約し、株式会社ストリートスマートの平川さんに相談し、改善のアイデアをいただきながら進めています。また、ミニ研修のテーマ設定も現場の声を反映したもので、非常に実践的な研修も実施できています。
校外では島内の小・中学校・高校の教務主任会で異校種間連携教育推進のため、ゲストアカウントを付与してもらい、Google を使用していない神津高校との連携も行っています。具体的には、中学校・高校での相互授業見学の実施ですが、スプレッドシートで中・高の時間割の共有を行い、見学したい授業と内容の確認、出張する際の手続きの簡略化などお互いに訪問し合いやすい環境整備も進めています。」

 

■副校長 中坪崇敏 氏

「ICT推進担当の主幹教諭が中心となり積極的に活用・運用してくれるため、本校ではICT機器に置き換えられるものは、順次変更してきています。これまで主幹教諭が提案し改善してきていることは数多いのですが、その中でもすでに定着していることは、Google フォームでの出欠席の確認や保護者会の出欠確認、そして、学校評価、授業評価も Google フォームで行っています。各種会議は Google ドキュメントの共有機能を使いペーパーレスでの実施、研究授業などの協議会も Google Jamboard を使って行っています。もちろん各教科でも Google Classroom を使いアンケートやプリントの配布、動画配信など様々な取組を行っています。
今後、ICT機器をさらに活用していくことはもちろんですが、「書いて覚える」「話し合い活動」など今までの授業で大切にしてきたことをどう融合していくのかがこれからの課題だと考えています。その課題解決の手だてを考え推進していく中心となるのがやはり、ICT推進担当の主幹教諭だと思います。」

 

ICT支援員 平川より

「支援開始から2年目ということもあり、支援する上で重要な先生方とのリレーションも構築できています。ICTの活用はさらに発展するフェーズへと進み、先生からの活用提案だけではなく、子どもたちからの主体的な活用や、児童生徒個人個人に最適な学習がより広がっていく段階です。神津島村様ではそうした部分にもフィットして進められています。引き続き活用発展へと寄与できるよう、支援内容も進化させながらサポートしていく所存です。」

 

 

※Chromebook、Google for Education、 Google スプレッドシート及び Google スライドは、Google LLC の商標です。

 

 

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株式会社ストリートスマートは、2017年に Google 認定の Google for Education Professional Development Partner(専門的能力開発パートナー企業:「PDパートナー」)に認定されました。そして、これまでの教育機関への総合的なICT導入支援実績が認められ、2020年に国内で初めて Transformation (変革)分野の Specialization 取得パートナーとして Google より認定されました。

自治体や教育現場の皆さまが効率的かつ負担なくGIGAスクール構想やICT教育を推進できるよう、学校常駐型のICT支援員各種研修など、ICTの導入から活用推進まで、さまざまなアプローチで皆さまに寄り添った支援を行っております。

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